内科、整形外科、リハビリテーション科、各科の医師、看護師、放射線技師、作業療法士、医療事務など、さとやま整形外科内科の医療スタッフがコラムを綴ります。患者様のお役に立てられるようなテーマで記事を執筆しています。
さとやま整形外科内科院長が贈る本コラムでは健康に関する雑話や豆知識などをいろいろご紹介していきます。
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運動と健康シリーズ③「運動不足は重大な健康リスク」
今回は少々込入った話になりますが、老化と運動についてです。
私たちが呼吸をするのと同様に、身体の1個1個の細胞も呼吸をしています。それは細胞が酸素呼吸とリンクさせてエネルギーをつくっているからです。
実はこの過程でごく一部の酸素分子が有害なフリーラジカル(活性酸素ROS)に変わり、絶えず出て来て遺伝子や酵素タンパクや膜脂質など細胞の重要な成分を傷付け、長い間に病気や老化や、さては癌の原因になるというのです(加齢のフリーラジカル仮説、D.ハーマン、1956)。
ところが驚いたことに、運動中には酸素を大量に消費するにも拘らず、ROSの産生は安静時より少ないことが分かったのです。これは運動中にROSを消去する抗酸化酵素が増えるからです。
すなわち運動はROSという毒を制する防御システムで対抗することが出来るのです。そこが運動の凄いところです。ですから運動不足の生活では毒に見合う毒消しの力が伴わないために、細胞は酸化ストレスに曝され傷害されるのです。
ROSの産生は酸素呼吸をする生物の宿命ですが、運動はそれを乗り切るために我々に与えられたサバイバル術であり、老化予防の最上のくすりになるのです。
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さとやま整形外科内科 院長 稙田太郎
インスリン抵抗性に関し、日本でいち早く人工膵臓を駆使して臨床研究を展開。 医学博士号取得、元日本糖尿病学会専門医、指導医、功労評議員。
2022/10/03 Wrote